蔵の春

肥後守・肥後ナイフ・電工ナイフetc

縦折り真ちゅう鞘の「カネ駒」肥後守

縦折り真ちゅう鞘の「カネ駒」肥後守

 

 今回紹介する「カネ駒」は、戦前に作られたと思われる縦折り真ちゅう鞘の逸品だ。

 

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 刻印は「商標登録」の下にタガネ彫りで「肥後守」「定」、さらにお馴染みの「カネ駒」が打たれている。

 

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 サイズは鞘長9.3㌢で、鞘は厚めの真ちゅう製。刃材は割込で、刃厚が2.8㍉。シノギのラインも見て取れる。座金は少し大きめの真ちゅう製の菊座金。チキリ穴がある。

 

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 特徴的なのは鞘の両面に波紋のような模様がいくつも打たれている点。縦折り鞘に絵柄が打たれているのは珍しい。銘がタガネ彫りと言うことで時代的な雰囲気があり、当時製作された高級版の一つだろう。

 

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肥後桜

肥後桜

 

 この「肥後桜」は、戦後に作られた肥後ナイフの一つだろう。

 

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 刻印は「高級」「商標登録」「肥後桜」、その下に「別打」が打たれている。「桜」の文字が不鮮明だが多分間違いないと思う。

 

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 サイズは鞘長9.8㌢で、鞘にはクロムメッキが施されている。刃材は割込で、刃厚が2.3㍉。座金は両面とも平座金。チキリは比較的丁寧に成形されている。

 

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 作りが良く模範的な肥後ナイフだが、製造元など詳細は不明。名の知れた製造元のOEMではなかろうか。

肥後兼國

肥後兼國

 

 今回は、戦後に作られたと思われる肥後ナイフ「肥後兼國」のサイズ違いの2本を紹介する。

 

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 刻印はいずれも「高級」「登録」「肥後兼國」が打たれている。「兼國」といえば室町時代の刀工「兼國」が知られているが、これにあやかって名付けられたものだろうか。

 

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 小さい方は鞘長9㌢で、鞘にはクロムメッキが施されている。刃材は全鋼のようで、刃厚が2㍉。座金は両面とも平座金。一方、大きい方は鞘長9.7㌢で、鞘は光沢のステンレス製。刃材は割込で、刃厚が2㍉。座金は両面とも真ちゅう製の菊座金。チキリは大小いずれも小さめに成形されている。

 

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 大きい方はデッドストックのようで、小さい方もまずまずの状態だ。どちらも作りは良いが、使われている刃材や座金の違いから小さい方は廉価版、大きい方はやや高級版というところか。

縦折り鞘の「大和」肥後守

縦折り鞘の「大和」肥後守

 

 これは以前に紹介した「大和」肥後守の縦折り鞘タイプ。戦前に作られたものだろうか。

 

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 刻印は横折りタイプと同じで一番上に「大和」、その下に桜の花びらのマーク、「登録」「肥後守」が打たれている。

 

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 サイズは鞘長8.5㌢で、鞘材は厚めのステンレス製。刃材は割込で、刃厚が2㍉。座金は両面とも真ちゅうメッキの平座金。チキリはやや丸めに丁寧に成形されている。

 

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 作りが非常にしっかりとしており、実用的な肥後守だ。チキリの形状から「宮本武蔵」の宮本製作所が組合加盟時代に製造したもののような気もするが詳細は不明だ。

 

肥後ナイフ「東京タワー」

肥後ナイフ「東京タワー」

 

 この肥後ナイフは、東京タワー観光のお土産として販売されていたものだろう。

 

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 刻印は、鞘の表面に「TOKYO」「TOWER」、その下に先端から電波を発信する東京タワーの図柄。裏面には「333M」「東京タワー」が打たれている。

 

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 サイズは鞘長9㌢で、刃厚が2㍉。鞘にはメッキが施されていたようだが全て剥がれてしまっている。刃材は全鋼のようで、刃厚が2㍉。座金は両面とも菊座金。チキリは丁寧に成形されている。

 

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 東京タワーの図柄が以前に紹介した肥後ナイフ「TOKYO 少年」とよく似ており、同じ製造元ではなかろうか。肥後ナイフと東京タワー観光の組み合わせはもう一つピンとこないが、子供たちには人気があったのかも知れない。

 

三日月丸

「三日月丸」

 

 今回は、ミニサイズの肥後ナイフ「三日月丸」を紹介する。おそらく戦後に作られた学童用のナイフだろう。

 

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 刻印は「三日月丸」のみが打たれている。戦後に製造されたものはほとんどが商標登録されて刻印されているが、この「三日月丸」はサイズが小さいのでスペース的に銘以外は打てなかったのかも知れない。

 

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 サイズは鞘長6.4㌢で、鞘には銅メッキが施されている。刃材は全鋼のようで、刃厚が1.9㍉。座金は両面とも菊座金。チキリは丁寧に成形されている。

 

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 見た目は可愛いが作りは本格的で、以前に紹介した「肥後乃武蔵」と作りが酷似しており、同じ製造元ではないかと推測する。

 

 

 

縦折り鞘の肥後守19

縦折り鞘の肥後守19

 

 今回は、戦前に作られたと思われる縦折り鞘の肥後守を紹介する。

 

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 刻印は、打刻が甘かったようではっきり判読できるのは「守」だけだが、その上にわずかに「後」の一部らしきものが見えるので、おそらく「肥後守」と打たれていたのだろう。

 

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 サイズは鞘長9.8㌢で、鞘にはクロムメッキが施されていたようだがほぼ剥がれてしまっている。刃材は全鋼のようで、刃厚が2.5㍉。座金は両面とも平座金。チキリは丁寧に成形されている。

 

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 刻印は残念だが縦折り鞘にしてはしっかりとした作りで、作り慣れた職人の手による実用本意の肥後守と言えそうだ。経年の劣化はあるがまだ十分に使える。