電工ナイフ「名宝」

電工ナイフ「名宝」

　この「名宝」は、先に紹介した「氏房」と全体の作りがほぼ一緒で、刻印を隠すと区別がつかないほど似ている。製造時期もおそらく同じ頃だろう。

　「氏房」は三光商会の登録商標で、元々刀鍛冶だった篠田寛さんという方が昭和30年代から50年代にかけて電工ナイフを作っていた。「名宝」の製造元は不明だが、作りを見る限り篠田さんの製作所のＯＥＭであってもおかしくないと思う。

　刻印はブレイドに「登録」「名宝」が打ってある。鞘長11.4㌢。ブレイドは個体により若干形状が異なる部分もあるがオーソドックスなドロップポイントで、グリップはジグドボーン製。ボルスターは真ちゅう製の横溝が１本入ったタイプ。刃材はいずれも全鋼のように見える。

　この時期の電工ナイフは、銘が違ってもグリップの形状はほぼ同じで、それゆえに製造元が同じなのか別なのか判別を難しくしている。以前にも記述したが、グリップは専門の製作所があったように思えてならないのだが、如何だろうか。