「無銘の縦折り鞘」

「無銘の縦折り鞘」

　この縦折り鞘の肥後ナイフは、無銘ながら風格を感じさせる味わいがある。

　刻印は、鞘の表裏とも見当たらない。元々打たれていなかったのか、それとも使われているうちに消えてしまったのだろうか。鞘にはおそらくクロムメッキが施されていたと思うが、完全に剥がれ落ちている。

　サイズは鞘長9.8㌢で、刃厚は2.2㍉。刃材は利器材ではなく、刃の峰などに鍛錬の痕跡が残る本物の割込のようだ。元の持ち主が長きにわたり愛用していたようで、だいぶ研ぎ減りが進んでいる。座金は両面とも平座金で、チキリは大きく小判型に成形されている。

　無銘ということで製造元は知る由もないが、この個体は銘が打たれていないことと研ぎ減りが進んでいる以外は申し分なく、縦折り鞘としてはなかなかのものだと思う。