蔵の春

肥後守・肥後ナイフ・電工ナイフetc

「カネ駒」縦折り鞘

「カネ駒」縦折り鞘
 このカネ駒は、何年か前に勤め先の事務所から車で5分程の所にあるスーパーマーケットの駐車場でフリーマーケットを毎月1回開催しているIさんから入手した。
 Iさんは、蒐集を始めたばかりの頃にヤフオクで電工ナイフを落札し、取引き連絡を行なっているうちに、偶然にも毎月遊びに行っているフリマを主催している方だと分かった。以来、ありがたいことに肥後守や肥後ナイフ、電工ナイフがあると売らずに保管しておいて安価で譲ってくれる、私にとっては数少ない理解者であり協力者だ。
 ある日のこと、Iさんとの月1のご対面に出掛けると、「こんな物があるけど」と手渡してくれたのが古めかしい縦折り鞘の肥後守の特大。見た瞬間「何だ?これは?」とビックリ。刃は研ぎ減りしてサビが酷かったが、注目すべきは刻印で、よく見るとタガネ彫りで「肥後守定」とあり、その肥後と守の間に「登録商標」の打刻。一番下にお馴染みのカネ駒の刻印がある。
 カネ駒の肥後守は本当にたくさんのタイプがあり、古いものから現行品まで数多く所有しているが、こんなに武骨で、堂々としたタガネ彫りのものは見たことがなかった。しかも、ごつい大き目のチキリと通常のものよりひと回り大きくて厚い真ちゅう製の8角形の座金。「本当にカネ駒か?」と疑念を抱かせるような肥後守だ。
 カネ駒の刻印があるので、おそらく本物に間違いないはずで、一般に市販されたものではなく特注品か、もしくは刻まれた「肥後守定」がタガネ彫りであることから初期の頃にはこんなナイフも作っていたのか。あるいは、元の所有者がカネ駒の古い鞘を生かして他の古い刃を入れ替えた可能性もなきにしもあらずだ。
 刃は全鋼で、トンガリ刃。鞘長12.2㌢。チキリ穴あり。

 最近は、前出のIさんからの入手がほとんどなくなってしまった。Iさんは古物商の資格があり競りにも参加しているが、このところ肥後守が混じったものは高値傾向が続いているとのこと。たとえ仕入れても私相手では商売にならないので、ついつい二の足を踏んでしまうのだそうだ。ご無理は言えません。Iさん、気長に待たせていただきます。

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