「薩摩健児」

「薩摩健児」

　肥後ナイフには「肥後」にちなんでか九州の地名を入れた銘が多々あり、この「薩摩健児」もその典型的な銘の一つ。何処で作られたものだろう。肥後守・肥後ナイフのメッカ・兵庫県か、それとも薩摩の国・鹿児島県か、悩ましいが想像力をかき立てる銘だ。

　小さなサイズの縦折り鞘にしては、実用にも耐えられるしっかりとした作りの肥後ナイフである。鞘表に丸に「Ｉ」のマークと「薩摩健児」の鮮明な刻印が打たれている。

　兵庫県三木市の肥後守組合に加盟していない製造元は、銘に同組合が商標登録してある「肥後守」を使えないが、各自がオリジナルの銘を商標登録していた。従って、ほとんどの肥後ナイフには鞘に登録や商標登録の打刻があるが、この「薩摩健児」にはない。

　「薩摩健児」は、この縦折り鞘の他に横折り鞘のものもある。これほど完成度の高いナイフを作る製造元がなぜ商標を登録しなかったのか、それとも登録してあるが、あえて打刻しなかったのか、分からないな。

　サイズは２本とも鞘長７㌢。刃材は割込で、座金は両面とも平座金。写真ではまったく同じ型に見えるが、片方にチキリ穴があり、もう片方にはない。

　２本とも長年にわたり愛用されていたようで、刃が同じようにかなり研ぎ減りしている。こんな小さな折り畳みナイフを何に使っていたのだろうか。