蔵の春

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「肥後守を研ぐ」その3

肥後守を研ぐ」その3

 今回は、「その2」で紹介した岩石を採取してきた神奈川県西部の沢の支流で見つけたものを紹介する。

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 沢の支流をハンマー片手に歩いていると、見るからに妖しい色の岩石が目に入ってきた。どうやら地層が露出しているのではなく、川床に埋まっている大きな岩石の一部が顔を出しているようで、詳しくは分からないが変質した泥岩のように見える。

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 バネ指の痛みをこらえながらハンマーを振るい、採集バッグに入るくらいの大きさに砕いて持ち帰った。見た目は脆そうだがぼろぼろ崩れるようなこともない。とりあえずディスクサンダーと荒砥を使って平らにしてみると、全面に不規則にヒビが入ったような不思議な模様が現れた。

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 さっそく試し研ぎ用の割込刃を研いでみたが、気になっていたヒビに引っかかるような感覚はなく、どことなく良さそうだった。しかし、研ぎ面の養生が足りないことやバネ指が痛いので根気よく研げないこともあってか、細かい擦過痕が消えない。そこで箱根西麓の沢で拾ってきた小豆色の石を擦り付けて研ぎ汁を出し、研ぎ直してみた。

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 すると効果てきめん、ざっと研いだだけで地金の部分は薄く曇り、鋼の部分の擦過痕もほぼ消えて鍛接線がくっきりと浮き出た。鍛接線がこのくらい鮮明であれば肥後守用の砥石としては合格だ。重たい思いをして運んできてよかった。それより何より、この小豆色の石はまさに“拾いもん”かもしれないな。