蔵の春

肥後守・肥後ナイフ・電工ナイフetc

「山平」肥後守・後期

「山平」肥後守・後期

 先に「山平」肥後守の横折り鞘の前期(古いもの)を紹介したが、今回は後期のものを紹介する。前期と後期に分けたのは、座金の形式が途中で変わったことから勝手に製造期を区分けさせていただいた。
 前期のものは、両面とも一般的な平座金が使われていた。ところが後期のものは一見して平座金のようだが、実際は座金を使わずに裏側から座金型に押し出している。こうした形状は他の肥後守・肥後ナイフには見られず、この「山平」独自の技法だ。

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 1枚目の写真の1番上は特大サイズ(鞘長12.2㌢)、その下の2本は大サイズ(鞘長9.8㌢)で鞘が黒のクロムメッキ。2枚目の2本は鞘が艶消しのクロムメッキ、3枚目は光沢のクロムメッキで1本は鞘裏に「本手打品」の刻印がある。4枚目は中サイズ(鞘長8㌢)で、1本は擦れて地金色が出ているが元は下と同じ黒のクロムメッキだったようだ。

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 刻印は、前期のものは「山平」のみとか「正鋼」や「割込」の入ったものなど4種類もあったが、後期は「特級」「登録」「山平」のマークに「肥後守」の刻印の1種類のみとなっている。ただし、書体の違いが3種類、鞘の形が2種類ある。

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所有しているものに限っての判断となるが、刃材は前期がほとんど割込だったのに対し、後期は大きさに関わらず全て全鋼になった。何か製作上の理由でもあったのだろうか。チキリは丁寧に叩いて丸みを帯びた形になっており、カシメ(ピン)も頭が丸く削られているなど、やはり肥後守の手本のような作りだ。