蔵の春

肥後守・肥後ナイフ・電工ナイフetc

「山正肥後守 秋水」特大

「山正肥後守 秋水」特大
 この「秋水」との出会いは劇的だった。何年か前、仕事の関係で神奈川県の厚木球場へ出掛けた。近くの駐車場で送迎バスを降り徒歩で球場に向かう途中、道路の反対側に金物店を見かけた。
 当時は、金物店を見かけると店に入って肥後守を探すことが習慣のようになっていたこともあり、ランチタイムに球場を抜け出してお店へ。ざっと店内を見渡したが肥後守は見当たらない。そこで店のご主人に「肥後守を蒐集しているのですが、置いてないですか」と尋ねると、「確かあったはず。ちょっとお持ち下さい」と店舗2階へ上がっていった。しばらく探しているような音が聞こえたが、どうやら見つからなかったようで、戻ってきたご主人が「あったはずだが」と申し訳なさそうに言った。
 手間をかけてしまったことをお詫びし、仕事に戻るため球場に向かって歩いていると、背後から「お客さーん、お客さーん」と大きな声が聞こえた。振り返ると先ほどのご主人が追いかけてきて、「ありましたよ」と見覚えのある金物協会共通の肥後守の箱を差し出した。
 さっそく蓋を開けてみると、ビニールの袋に入った特大サイズの肥後守が3本入っていた。その内の1本を手にし、銘を見てビックリ。「山正肥後守 秋水」だった。「秋水」に特大があるとは聞いていたが、それまで私が知る限りヤフオクに出品されたことがなく、もちろん実物を見たのもこの時が初めてで、本当に夢のような気分だった。
 ご主人も何故か嬉しそうで、お店に戻って支払いを済ませようとすると「1本800円だから3本で2400円になります」とのこと。思いがけない安価に感激していると、さらに「ちょうど2000円でいいですよ」と気前良くまけてくれた。もちろん箱付きでだ。
 もう飛び上がりたいような気分で、親切なご主人にお礼を言って早々にお店を後にし、「きっとこの秋水は私のもとに来たくて静岡から私を呼び寄せたに違いない」などと訳の分からないことを呟きながら球場に戻った。これも忘れられない思い出の一つだ。
 サイズは鞘長12㌢で、ステンレス材。座金は真ちゅう平座金。

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